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灼眼のシャナ 22巻感想

以下ネタバレ


何か最後は原作版封神演義みたいなラストだな、と思った。

結局、動きの素早さでも戦略でも物量でも終始フレイムヘイズ陣営を上回った
仮装舞踏会側が順当に目的を達成し、
新世界創造の瞬間が荘厳に、それでいて、どこか淡々と描かれる、というラスト。

この最終巻に関しては主人公であるシャナと悠二の物語は最後の対決に絞られ、
それ以外の大半は、連綿と続く人間界と紅世の歴史における大きな転換点、
新世界創造と言う歴史的大事件を、それぞれの視点から平等に描かれたように感じた。

バトルでよくある味方陣営と敵陣営のガチンコ形式による最終決戦は、
もう10巻でやったから別にいいやということなのだろうか。
元々仮装舞踏会陣営は、フレイムヘイズに強烈な敵意を抱く集団というわけでもなかったし、
シャナ達メインキャラと三柱臣の関わりも薄かった。
こういう形に落ち着くのが、むしろ自然な形にも思える。

人を喰らう紅世の徒は、ほとんど二度と戻って来られない新世界に行ってしまい、
シャナ達の成した改変で新世界でも人が食べられることは無くなった。
概ね敵方の思い通りになったにも関わらず、
人類、徒、フレイムヘイズの三陣営にとって、限りなく理想的な形に収まった
わけで、
「何でこいつらこんな命懸けで戦っていたんだっけ?」
思ってしまうのだが、
そもそも、フレイムヘイズと徒は争い合うのが常識であり宿命。
人類にとって徒は一方的な侵略者であり捕食者以外の何者でもないし、
フレイムヘイズは一部の例外を除けば皆徒への憎悪に燃えている復讐者なので、
最初から和解の可能性は皆無。
一般的なフレイムヘイズは紅世の徒のやることは全部悪だと決めつけているし、
実際連中のやって来たことで世のため人のためになったことなんて何一つ無い。
これでは信頼や和解の可能性なんて1%もありはしないし、
少ない確率に賭けるのは計画を遂行する者としちゃ愚行。
悠二や三柱臣にとっては絶対に敗北の許されない戦いなので、
下手に情報を開示して計画を阻止される方が恐ろしかったのだろう。

ヒラルダを使うと死ぬというのは、精神集中を行わせるためのハッタリ。
よって吉田さん生存。
日常の高崎先生の「こ、こいつぅ」を言いたくなる。


喋った!ティアマトーが喋った!!

今まで熟語でしか喋らなかった紅世の王の、満を辞しての長口舌でした。


最終決戦は

1.シャナ&マージョリー&ヴィルヘルミナVS悠二&シュドナイのメインキャラ同士のバトル

2.無尽蔵に湧いて来る徒を殺しまくる大地の三神、

3.サーレ&キアラVS教授&マモンの因縁のバトル

4.フィレスとヨーハン、吉田さんを乗せて戦場を逃げ回る百鬼夜行と
それを手助けするカムシン、ヴィルヘルミナ


という大きく分けて四極の戦いが繰り広げられる。
基本的にフレイムヘイズ陣営は、最初から仮装舞踏会の新世界創造を阻むつもりが無い。
徒の大半が新世界に行けば、遠い未来の危機はともかく
少なくとも今いる世界は確実に救われるのに、
割と迷いなく戦いを挑んでいったのがちょっと首を傾げざるを得なかったのですが、
最初から新世界創造と現世からの徒の追放は容認する気だったのなら納得がいく。
それでも、彼らが戦いを挑んだのには、それぞれの戦いに
後の世界をよりよくするための重要な役割があったから。


1.

シャナ達の狙いは、大命詩篇を改変し、新世界で徒が人間を食べられないようにすること
新世界には存在の力が溢れているため、人間を食べなくても徒は生きていける

この目論見を聞いた時は最初「え?そんなのでいいの?」と思えたのですが、
私、てっきり新世界でも徒は人間食べないと
生きていけないのだと思っていたんですよねぇ。
そうじゃなきゃ、そこまで深刻な事態でも無いよなと思えたので……
もはや前の巻のことなどほとんど覚えてないんですが、
まぁ私の理解力不足だったってことで。

それにしても、ここに来て悠二にはラスボスとしての威厳が欠片も無く、
完全に創造神の方が目立っちゃっているのが何とも。
これまでは悠二に利用されているだけと言うイメージのあった創造神が、
最後の最後で逆転した感じです。
最後の方では今まで見えなかった、創造神の人間らしい本来の性格が見られたし。

しかし悠二とシュドナイか……

「僕はシャナを愛しているのであって決してそういう趣味じゃない!」
「俺はヘカテーを愛しているのであって決してそういう趣味ではない!」


そういうコンビかw


2.

大地の三神の殺戮は、人を喰らえばこうなるという意識を全ての紅世の徒に叩き込むこと。
アニメ化して一番楽しみなのが大地の四神の戦闘シーンだったりする。
ちゃんと登場するよね?OPにはセンターヒルがいたし。
しかしウェストショアの珊瑚色の炎って具体的にどんな色なんだ?
珊瑚なんていろんな色があるだろうと思ったが、
実際に珊瑚色という色は存在するらしいですね。


3.

断末魔「おや でもろともに消滅する教授とドミノ。

大半のキャラが生き残ったけど、教授とドミノの戦死は、ありえることとはいえ予想外だった。
教授はともかくドミノは何となく死ななさそうだったのになぁ。
殺しても死にそうにない奴らが呆気なく死ぬところに意外性があって良いというべきか。

最初から新世界創造については見逃す気でいたフレイムヘイズ達にとっては、
三柱臣やその他の王は生かしておいてもいいけど、
教授はこちらの世界でも新世界でも絶対に厄介事を引き起こすこと間違いないから、
ハッピーエンドのためには殺すしかなかったのだろう。
マモンは結局イラスト描かれること無く逝ってしまったね。アニメに期待。


4.

で、その教授討滅の真の功労者は、この戦争とは全く関係の無い百鬼夜行組。
偶然見つけた空洞が教授の緊急脱出路だったとは上手い。

フィレスとヨーハンが作った『両界の嗣子』ユストゥス
大勢の徒が押し寄せ、大量の存在の力が集まる場所だったから、
という理由があるとはいえ、アシズや九垓天秤があれだけ苦労して、
しかも達成できなかったことを何て易々とてな気がしないでもないw

カムシン・ネヴハーウ死亡

こちらも何となく死ななさそうな気はしていたが、
最終巻におけるフレイムヘイズ側唯一の戦死者となる。
ある意味、カムシンの最期を看取ったことが
吉田さんがこの戦場に来た最も大きな意味だったように思えるよ。


ロフォカレの主として存在だけは示唆されていた三体目の神は、
導きの神、“覚の嘨吟”シャヘル
炎の色は、祭礼の蛇の黒とは正反対の純白なんだけど、

最初に出て来たフリアグネの色が薄い白だったのはここで使うためか。

シャヘルの嘨飛吟声、蛇の祭基礼創、アラストールの天破壌砕

神威召喚の名前は全て四字熟語なのね。
ヘカテーが死ぬのは神威召喚の生贄と同じことなのだとこの巻で気付いた。
天破壌砕の時は敵のジャリを生贄にしたけど、
祭基礼創の時はヘカテーじゃないとダメなのかな。


仮装舞踏会の切り札、それは零時迷子の真の機能を解放することで、
創造神が自分の意志で創造を行えるようにすること。
これにより、途中で加えたいかなる改変も無効となる。
ベルペオルの信条である「ままならぬことを乗り越えてこそ面白い」
その中でも最もままならぬことと言えば「創造神は自身の意志で創造を行えないこと」。
創造神に最も近しい眷属であるベルペオルは、この宿命をずっと乗り越えたいと思っていたように感じる。
これは、仮装舞踏会の最終目的を達成すると同時に、ベルペオルが己の信条を貫き通したことにもなっている。

しかし、最終的には徒たちが、シャナ達の望んだ通り、
人間を喰らえぬ世界を望み、創造神もそれを受け入れる。

それには大地の三神による大虐殺や、『両界の嗣子』の誕生もあるだろうが、
やはり永い人間社会との関わりの中で、
徒全体の意識が変化していったことが大きいのだろう。
それは、徒全体が望んだ理想郷としての『無何有鏡(ザナドゥ)』が、
人間の住む、今の地球と全く同じ世界だったことからも伺える。
存在の力が溢れているにも関わらず、なお彼らは人間の存在を望んだ。
人化の法で人間の姿を取る徒が多くなったように、
人間と『明白な関係』を築こうとした[革正団]なる組織が生まれたように、
徒は人間と関わりたい欲求を持ち続けていた。
しかし、人を喰わずにはこの世に存在できない徒は、
どう足掻いても人間から拒絶される道しかない。
創造神が察した通り、この現状を徒たちは皆“悲しんで”いたのだろう。
人間を喰らわずとも生きていける新世界でなら、
多くの徒にとっては、人間を喰らうことは人間と関わる上で邪魔な力でしかない。
最終的に、人間を喰らえぬ新世界に収まったことが、
多くの徒がそれを望んでいた証明となろう。

新世界への一番槍を任されたのは我らがリベザルさん。
盟主となった悠二に真っ先に挑んで敗れたリベザルがこの役目を任せられるのはいい感じ。
生き残った将帥や、死んでいった者達の名を挙げる辺りも、原作版封神演義っぽいな。

仮装舞踏会の名の由来は、大命のため自らの欲望を仮装して舞い踊る……ということから付けられた。

ヘカテーは新世界創造の生贄となり、
シュドナイも大量の存在の力を利用したマージョリーに討滅される。
しかし、二人とも再び創造神が目覚める時、生まれ変わっての再会を当然のように信じて疑わない。
だから今生の死も、一時の別れとしか思っていない。
そして、創造神は三柱臣を息子や娘のように思っている。
この四者の分かちがたく結びついた、ニンゲンには想像しづらい関係が、
最終巻でようやく見えた気がするかな。

同じ徒の集団でも、人間らしい熱い忠と絆で結ばれたとむらいの鐘と比べると、
創造神と三柱臣はやや見劣りする感があったが、
常に何も変わらず、いつも通りであることが、彼らなりの強固な結束なのだと思えたり。

しかしシュドナイってあんなに強かったのかよ……
神鉄如意を使ってないし、本気じゃないとはいえよく初期のシャナ達で対抗できたな……

挿絵が多かったり、アニメでは女子高生にされたり、
敵方では最もプッシュされていたヘカテーだったが、結局全くデレなかったな!
私としては安直にデレる敵方の女幹部って嫌いなので、ありがたいことですが。
円環少女のアンゼロッタ同様、そういうキャラは非常に珍しい。

そんなヘカテーとシュドナイが手を繋いで遠い彼方に歩いていく挿絵が良かった。
しかし、のいぢ先生は前にも増して線が濃く、絵が力強くなった気がします。
以前は前の絵柄と今の絵柄の中間あたりで、
薄くも濃くも無いのが何か変な感じだったんですが、
それは過渡期だったからで、ここで新しい画風を完成させたということだろうか。
ハルヒは読んでないから分からないが、他の作品でもそうなのだろうか。

結局悠二はただ罰を受けたかったのか。結果的にすべてが上手く行ったとはいえ、
そこに至るまでに大勢のフレイムヘイズや人間を死なせているのだから、
普通の人間の精神では到底耐えきれるものではあるまい。
まぁラストはあんな感じになったが、あそこで今更こじらせてもなぁ、
ということでこれまた順当な落着と言えようか。
とりあえず吉田さんをきっちり振ってシャナ一人に絞ったその一点で主人公としては及第点をやれる。


全体としてまだ語りたいことはありますが、ひとまずこれまで。
まだ外伝3巻が出るそうですが、ひとまず高橋先生長期の執筆お疲れ様でした。


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コメント


確かに教授が死んだのは予想外もいいところでしたよね。
多分誰もが死にそうに無いと思っていただけに。でも一見ギャグキャラですが辺りに撒き散らす被害の度合いがトップなだけに未来のためには討滅するしか無かったのか。

ベルペオルって多分敵方の策士としては前代未聞のキャラだったんじゃないでしょうかね。味方ならいざ知らず、どんなに優秀でも敵方ならば策が敗れて果てるのが必然でしょう。なのに結局誰もこのヒトの裏をかくことは出来なかった。強いて言えば徒達の総意というところでしょうか。

悠二終盤ひたすらシャナにぶっ飛ばされている気がします。

Re: タイトルなし

> 確かに教授が死んだのは予想外もいいところでしたよね。
> 多分誰もが死にそうに無いと思っていただけに。でも一見ギャグキャラですが辺りに撒き散らす被害の度合いがトップなだけに未来のためには討滅するしか無かったのか。

まぁ、誰が死んでもおかしかなかったんだけど、
ドミノとまとめてあんな呆気なく消えるのは完全に想定外でした。


> ベルペオルって多分敵方の策士としては前代未聞のキャラだったんじゃないでしょうかね。味方ならいざ知らず、どんなに優秀でも敵方ならば策が敗れて果てるのが必然でしょう。なのに結局誰もこのヒトの裏をかくことは出来なかった。強いて言えば徒達の総意というところでしょうか。

策士キャラの面目躍如ですね。

>どんなに優秀でも敵方ならば策が敗れて果てるのが必然でしょう

そんな読者の思い込みの裏をかくのが高橋先生の

まぁベルペオルは他の策士とはちょっと違うとは思ってましたけどね。
彼女、創造神が悠二として復活した時も、
悠二が自分の意志で何かする可能性を考慮にいれていたもの。
強者が良く足を掬われがちな、不確定なご都合主義、
弱いものの底力を侮っていない時点でこれはかなりの大物だなと。


> 悠二終盤ひたすらシャナにぶっ飛ばされている気がします。

惚れた方が負けとはよく言ったものだw

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